指導と評価の一体化

評価を情報収集の過程として捉える

 「指導と評価の一体化」ということを近年重要視する傾向が強まっている。具体的に説明すると、授業の様々な段階で、もしくは学習の様々な局面を対象にして、授業や学習の方法や学習者の学習の実態と学習成果をとらえ、そこから得た情報を、授業や学習に効果的にフィードバックしていくことを指している。 つまり、「評定(成績づけ)のための評価」と「学習者の学習促進のための評価」とを明確に区別し後者を重視して授業をよりよいものにしていこうとするものである。 そう考えると、いくつかの点で実践的力量を付けていかなければならないことになる。

 ①学習のどの局面に焦点を当てて評価するとどのような情報が得られるのかということを理解しな  ければならない。

  ②観察法やポートフォリオ法など比較的主観性の高い評価方法から得た情報を扱って学習者の学習  促進に生かしていかなければならない。

 ③指導や学習方法と得られた情報との因果関係を解釈し、学習者にとって役立つ情報や援助を提供  していかなければならない。  

 こういった点に焦点化して教師の実践的力量を形成するプログラムは現在鋭意開発中である。(夏までにはアップロードしようと考えています)  現在新しい評価法として注目されている「オーセンティック評価」や「アルタナティブ評価」などは基本的にこの考え方をベースに持っているもので、方法論としては確立しつつあるのですが(英米では)実践レベルでの検証や改良は現在進行中といったところです。

 

段階としての診断・形成・総括的評価

 かつて、形成的評価を中心として、授業のどの段階で評価するかという観点で三つの評価が提案されました。それが「診断的・形成的・総括的評価」です。 「診断的評価」は学習者の意欲や教材に関する興味などを探り、そこから得た情報をこれから行われる学習や学習計画に生かす目的を持っています。それ故にひろく学習者のレディネスを対象とした情報収集が進められ、学習をより学習者の能力や興味に適合したものへと作り替えていくことが目指されました。 「形成的評価」は学習者の学習の進め具合や学習者のつまづきなどを、学習過程の中で捉え、学習方法をより学習者個人に適合するものへと変更したり、個人的な支援を施すために情報を収集することを目的とした評価です。それゆえ、具体的な学習目標に照らし合わせた情報収集を進めながら、学習者がより高い学習効果を得るためのアドバイスなどを主なフィードバックの方法としています。 「総括的評価」は学習後の学習成果を対象とし、目標とした学習内容を学習者がどの程度習得しているのかという点を情報化することを目的とした評価です。そこで得られた情報は、評定のために用いられる傾向が強いのですが、むしろ発展的な学習の計画に生かしたり、治療的指導の手がかりとするなど、あくまで、学習者の学習促進のために情報を利用する方向性を模索する必要があります。  

 こういった授業の様々な局面において、それぞれの目的に応じた評価を施していくことは実践レベルでも十分浸透していて、逆に授業の中で評価を施しすぎて評価漬けになっている授業もあるわけですから、形式的に用いるのではなくあくまで、どういう情報を得て、どのように利用するかという見通しを持って評価を計画的に施していくべきでしょう。 

 

オーセンテイック評価(Authentic Assessment)

 「オーセンテイック評価」については別の項でくわしく扱うことにしますが概要だけここで述べておきたいと思います。これまで述べてきた内容に関係づけるとするとこの新しい評価は、「学習者の学習促進のために得た情報を利用するためだけに施される」評価のことです。 主要な情報収集の方法としては、「観察法」、「面接法」、「ポートフォリオ法」などが挙げられますが、どれも主観的要素の強い評価方法です。 この主観性を克服するための方法は二つあって、一つは教師の観察眼を磨くことです。これは以前にも下一術かも邦夫ける評価の改善に置いて指摘されていたことですが、そのために教師がそれぞれの教科の学力に関する理解を深める研修を重ね、学習者の学力を観察する目を養うことが重要になってきます。 もう一つの方法は、「ルーブリック」といわれる「評価基準(学習者が到達している学習レベルを示すもの)」と「評価規準(学習者が学習すべき内容を示すもの)」を組み合わせた絶対評価の観点を明確に持つことです。しかも、従来の記述とは異なり、様々な主観的なデータから得点化するために段階的な記述がなされていることが特徴となります。 私個人としては、「ルーブリック」による情報利用は、結局学力の固定的な側面を情報化して利用する結果を招いてしまうので、できれば、前者の方向性を支持したいと考えています。 でも、「ルーブリック」が具体的なレベルで作成されていけば、学習者の学力をパフォーマンスレベルで基準化できうる教科は効果があると考えます。